大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)2796号 判決

被告人西原友信の控訴趣意、被告人山本実の控訴趣意中免訴を主張する部分、被告人西原の弁護人の控訴趣意第一点第二点及び被告人山本の弁護人の控訴趣意第一点について。

原判決の認定したところによれば、被告人両名は、原審相被告人渋谷実、同石川弘道、同和田昭の三名と共謀の上昭和二十二年七月二十五日午後十時三十分頃、短刀、竹棒等を携えて川崎市大島町三丁目四十七番地柴田菊男方に到り、同人及びその妻ヒデを脅迫した上同人らの手足を縛り、その反抗を抑圧して金品を強取したというのであつて、これが本件公訴にかかる犯罪事実であるが、他方、一件記録によれば、被告人両名は、同年九月九日西原真一及び前記渋谷実とさらに強盜を共謀し、同日午後九時過頃茨城県北相馬郡高野村大字高野百八十九番地鈴木三郞方に到り、所携の短刀を擬して同人らを脅迫した上右鈴木三郞、その妻しか及び養子橫瀬佐武郞を縛り上げて金品を強取したものであつて、右の事実については同年十月三十一日に水戸地方裁判所土浦支部で強盜罪として被告人西原友信は懲役五年以上七年以下に被告人山本実は懲役七年に処せられ、この判決は当時確定したことが明らかである。そして、右の二個の犯行はいずれも昭和二十二年十一月十四日以前のものであるから、同年法律第百二十四号附則第四項により、もしそれが同法律による改正前の刑法第五十五条所定の連続犯の関係にあるならば同条の適用を受け、法律上合して一罪としての取扱を受ける結果、本件公訴にかゝる強盜についても確定裁判のあつたものとして免訴の言渡をしなければならない筋合である。そこで本件強盜と前記確定裁判のあつた強盜との間に連続一罪の関係があるかどうかにつき考えるのに、右の二個の行為がともに同一の罪名に触れるものであることは明白であるが、これらの行為が連続したものと見られるためには、それが犯意を継続してなされたものであることをさらに必要とするところ、原審第三回公判調書によれば、右公判期日に出席検察官と被告人西原友信との間に「悪い事だが引き続いてやろうと思つていたのか。」「引き続いてやろうとは思いません。やめようとは思つていたのであります。」「みつからなければやろうと思つていたから又土浦で強盜をやつたのか。」「そのようなことはありません。」との問答があり、また被告人山本実との間にも「その後又強盜をやろうと思つていたか。」「そのようなことはありません。この時一度だけでうまく行けば清算してしまうつもりでした。」「その時一度だけでは清算できなかつたのか。」「できました。」との問答があつて、原裁判所はこれらの供述に徴し両行為の間に犯意の継続がなかつたものと認定したもののごとくである。しかしながら、前記のように右二個の強盜は、その間に一箇月十五日の期間しか経過しておらず、その参加者のうち三人までが共通であり、その他その犯行の態様がきわめて類似しているのであるし、他方一般に被告人は自己の犯罪の情状を重く見られることを恐れて一の犯行の後次の犯行を引き続いて予想していたというようなことは極力否認する傾向にあることわれわれの経験上明らかであるから、これらの点を綜合して考えれば被告人両名が原審公判廷において前記のような供述をしたからといつて、それだけで直ちにこれに信をおくことは妥当でない(ことに被告人西原友信については前記問答の直前に「今後引き続いて強盜をしようと思つていたのか。」「当時は見つからなければやるという気はありました。」「強盜を続けてやらなければならない事情があつたのか。」「当時私は叔毋さんの面倒を見ておりましたので悪いとは思いましたがやろうと思つておりました。」「被告人は強盜を商売にするつもりだつたのか。」「そのような気はありませんでした。しかし当時は働いても食えないので、みつからなければやろうと思つてました。」との反対趣旨の問答がなされており、それが突如として前記のような供述に変化していることに留意する必要がある。)のみならずおよそ連続犯の要件たる犯意継続とは、その各個の行為が当初においてすべて予見されていることを意味するものではなく、まず一個の行為を遂行した後において、初発の犯意の一部が継続中、新たに同種の犯行を決意し、その実行に及んだ場合をも包含するものであるから、(昭和六年七月四日大審院判決及び昭和七年六月三十日同院判決参照)たとえ被告人らが本件起訴にかかる強盜を実行する際に次の強盜を予想していなかつたとしても、これをもつて犯意継続なしと断定すべきものではないと同時にさらに一歩を進めて、かりに最初の強盜実行後かかる行為を繰り返すまいと一応思つたとしても、特にそれが右強盜の事実につき係官の取調を受け前非を悔いて再びこのような非行に出まいと固い決意をしたというような特殊な事情の下においてなされたものであれば格別一応かように思つたというような程度をもつてしては、前の犯意の一部はなお潜在的にその者の心裡に存在しているものであつて、次の犯行の決意はこの既存の犯意に継続してなされたものと認めるのを相当とするから、やはり犯意の継続ありとするに妨ないといわなければならない。そうであるとすれば、本件においては、その二個の強盜は短期間内に反覆され、かつその態様も類似しているのであつて、他方その間に右に述べたような意味で犯意の継続が中断されたと見るべき特段の事情も記録上発見することができないのであるから、この両個の行為はむしろよろしく犯意継続に出たものと認定すべきであつたのである。しかるに原判決が前述のように犯意継続なしと認めて連続犯の関係を否定し、本件起訴にかかる強盜の行為につきさらに有罪を云い渡したのは、事実の認定もしくは犯意継続の観念の解釈を誤り、延いては有罪の裁判をすべからざる者に対し有罪を云い渡した違法のあるもので、論旨はその理由があるとしなければならない。

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